ネイチャーポジティブな経済の促進

何世紀にも渡り、開発は自然を犠牲にして成り立ってきました


もし、自然と人が同じ場所で永遠に共生できるとしたら、どんな世界でしょうか?自然がもたらす生命の維持システムを破壊することなく、人々が気候変動に対応する力を持ち、生活と食料の安全を守れる世界とは?

 

コンサベーション・インターナショナルは、自然を経済発展の中心においた「ネイチャーポジティブ」な経済モデルを開発しています。陸や海が持つ様々な役割と機能、そしてそうした対象地で暮らす人々を保全計画に含めることこそ、ネイチャーポジティブな開発に効果的であることが分かっています。ローカルコミュニティを含めた大規模なスケールで生態系を捉えた「持続可能なランドスケープとシースケープ」の概念を基に、保全計画を組み立てます。この戦略は、一か所でもまたは複数の国家だとしても適応が可能であり、自立的かつ拡張可能な保全モデルの新たな創出へつながっています。私たちのこうした革新的な取り組みは、森林減少の流れを食い止め、持続可能な雇用を創出し、さらには廃棄されてきたものの価値をも高め始めています。

世界の現状

 

3人に1人

世界の3人に1人は、安全な飲料水を利用することができません。

10億人以上
10億人以上が、生計を立てるために周囲の森林に依存しています。
75%
貧困層の75%は農業で生計を立てており、受粉、水、土壌などの自然生態機能に頼っています。

2015年、193の国家は、2030年までに世界の貧困を終わらせ、不平等を是正し、環境劣化を防ぎ、公衆衛生を改善し、気候危機に取り組むことを目的とした、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に署名しました。

これらのほぼすべての目標の根底にある重要な要素の一つは、「自然」です。健全に機能した自然生態系がなければ、ほとんどの目標を達成することはできません。そして、企業、政府、コミュニティは、すべての人に持続可能な開発を提供するために、自然をしっかりと守り、適切な方法と場所で協力し合う必要があります。

コンサベーション・インターナショナルは、陸や海が持つ多くの役割と機能、そして、それらに直接的に頼って生活する人々を保全計画に含めることこそが、自然を適切に保護する上で最も効果的であることを確信しています。そこで「持続可能なシースケープとランドスケープ(Sustainable Landscapes and Seascapes)」戦略では、プログラムを実施するべき16の地域を選択しています 。

 

 

 

  プラネタリーゴール


-2030年までに達成すべきこと-
世界で生態学的に最も重要ないくつかの地域において、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に貢献するような、自然を活用した気候変動対策を含む、持続可能な開発モデルを適応させること。

 


私たちの取り組み

17
プロジェクト
アジア太平洋、中南米において、17つのパイロットプロジェクトを実施中
4億
ヘクタール
プロジェクトの総面積は4億ヘクタール以上をカバーしている
3,800
万人
CIのプロジェクトによって自然生態系の恩恵を受けている人々の数


コンサベーション・インターナショナルは、世界的に重要な地域において、次の方法により自然に基づく開発アプローチを実行しています。

  • 様々なパートナーシップを組み、自然が保護されたり、再生したのちに、人々の幸福度(human well-being)が向上することを実証しています。

  • 政府、企業、支援者、投資家たちからの資金を組み合わせ、自然に基づく開発への移行を支援する革新的なファイナンス手法を開発しています。

  • 人々の需要と持続可能な生産、重要な自然資源の保護、そして、地域の利益をつなぐような、実現可能な商品の生産モデルを作り、実践しています。


コンサベーション・インターナショナルの約束

 

Siti Normah holds up a medicinal root collected in a nearby forest.  
© Benjamin Drummond

少なくとも3つの、大規模なランドスケープまたはシースケープにおいて、自然由来の開発モデルを導入し、人間の幸福度(human well-being)の向上、および自然を強化することで、コミュニティが外部からの介入に依存することなく、長期的な発展を継続できるようにします。

 

© robertharding / Alamy Stock Photo

自然由来の開発モデルを構築するため、3,000万米ドルを超える資金の革新的な投資を行います。
© Benjamin Drummond

企業の持続可能な生産や現地政府による自然に基づく開発を推進するために、少なくとも5つの金融および規制システムのモデルを構築して提供します。このシステムにより、人々や企業、政府が目標達成を目指す上でいかに自然が果たす役割が重要であるか理解することができます。

 


現地プロジェクト紹介

コンサベーション・インターナショナルが世界各地で実施しているプロジェクトをご紹介します。

 

© CI/John Martin
バーズヘッドシースケープ
インドネシア・西パプア州の「バーズヘッドシースケープ」は、世界でも有数の海洋生物多様性を誇る地域です。しかしほんの10年ほど前まで、この地域は違法な商業漁業やダイナマイト漁などによって環境壊滅の危機にさらされていました。
2004年に開始したバーズヘッドシースケープの取り組みは、世界的に見ても最も野心的なコミュニティ主導のプロジェクトです。CIは、これまでに30以上のパートナーと共に360万ヘクタールに及ぶ12の海洋保護区(MPAs)を創設しました。これらの海洋保護区では現地住民たちが雇用されており、沿岸部では、サンゴや魚類の調査、保護、そして人々の生計手段となる海洋資源の持続可能な管理や、資源保護の観点でのコミュニティ支援が行われています。プロジェクトの開始以降、魚の個体数は戻り、サメやクジラ、マンタなども戻ってきました。また、違法漁業は90%まで減少し、今では、サンゴが復活し、エコツーリズム推進の動きが盛り上がりを見せています。
© Cristina Mittermeier
東部熱帯太平洋シースケープ
およそ200万平方キロメートルに及ぶ、「東部熱帯太平洋シースケープ(Eastern Tropical Pacific Seascape:ETPS)」は、コスタリカ、パナマ、コロンビア、エクアドルの海域、海岸、島々にまたがる地域です。ここは、サメやカメ、クジラ、海鳥など、海の象徴的な生き物が集中していることから、「海のセレンゲティ(タンザニアの世界的に有名な国立公園に由来)」として知られています。この地域の沿岸および海洋生態系は、地域コミュニティの食料、雇用、気候に対する安全を支えています。

しかし、この地域は、違法な漁業や乱獲、無計画な都市開発や農業の拡大によって危機にさらされてきました。CIは2004年から、各国の政府や多くのパートナーと協力し、この地域の復旧と保護に取り組んできました。現在、800万ヘクタールに広がる20以上の海洋保護区(MPAs)が立ち上がり、マングローブの生態系と漁業の回復を実践しています。また、地元コミュニティによる協力がいかに自然保護にとって重要であるか明らかにしています。
© Andres Rueda
コロンビア、ボゴタ

コロンビアの首都ボゴタは、世界最大規模の原生自然である高地アンデス草原から水の供給を受けています。しかしながら、パラモ・コンサベーションコリドー(Páramos Conservation Corridor)として知られるこの地域は、集中的な牛の放牧や飼育、急激な都市成長率の上昇や気候変動による危機にさらされています。それにより約800万人が暮らすボゴタと近隣の自治体へ淡水を供給する生態系の能力も脅かしています。
CIは2006年、コロンビア政府と協力し国内初の気候変動適応プロジェクトを開始しました。現在、ボゴタ周辺の地域を対象に住民の水供給を確保するための森林保全プロジェクトを実施しています。これまでの10年間で気候変動の影響に敏感な高地草原の多くが適切に保護管理されるようになりました。点在的に広がる生態系と都市の人々をつなぐ役割を果たしている重要な森林の消失は、今では事実上止まり、地域コミュニティは、盛んに行われている地域農業からの恩恵を受けています。

© Trond Larsen
南アフリカ
南アフリカ国内で、豊かな生物多様性を誇る地域の農村農家と協力して、荒廃した放牧地の回復と気候変動への回復力の向上をサポートすると共に、家畜牛の健康を改善し、農家に新たな市場へのアクセスが生まれるよう、支援しています。

CIとPeace Parks Foundationの野心的なパートナーシップによるHerding 4 Health(H4H)プログラムでは、今後5年間で少なくとも5カ国における自然管理が改善され、150万ヘクタール以上の放牧地へ保護地域を拡大することを目指しています。H4Hでは、コミュニティ主導のアプローチにより、保護区域内と近隣の農家が直面する課題に取り組んでいます。南部アフリカでは、この統合的プログラムに国内での学びや教訓を取り入れながら、人間と野生生物の関わり方や、動物の疾病管理への新しいアプローチ、また、地元団体であるMeat Naturallyとのパートナーシップによる新たな市場へのアクセスにも焦点を当てた取り組みを行っています。

 

 

CIの重点テーマ