Aerial View of Rainforest, Iwokrama Reserve 

南アメリカ

生物多様性ホットスポット

© Pete Oxford/iLCP

アトランティック・フォレスト

南米のアトランティックフォレストには2万種に及ぶ植物種の宝庫であり、その40%は現地固有種ですが、現在、その森の10%以下しか残っていません。ブラジルの北東部のムルチ生態保護区域の近くの小さな場所にのみ生息する、3種類のライオンタマリン、6つの鳥類種を含め、20種類以上の脊椎動物が絶滅の危機に瀕しています。 およそ950種類の鳥がこのホットスポットに生息し、アカハシホウカンチョウ、ブラジルのオウギアイサ、その他絶滅の危機に瀕した多数のオウム種などが含まれています。

サトウキビプランテーションに始まり、後にコーヒープランテーションができるなど、この地域は何百年もの間に動植物の生息地を失ってきました。 今、リオデジャネイロとサンパウロは拡大の一途をたどる一方で、アトランティックフォレストは都市化に関連する問題から、深刻な影響を受けています。

Green-headed Tanager in Brazil
© Will Turner

概説

アトランティックフォレスト、別名マタアトランティカは北はリオ・グランデドノルテから南はリオ・グランデドスルまで、ブラジルの大西洋岸に沿って延びています。 そして、東パラグアイ、アルゼンチン北東のミシオネス州の内陸に、またウルグアイに向かった海岸沿いにも狭く伸びています。 また、このホットスポットには、フェルナンドデノロハの沖合列島やブラジル海岸沖の島々が含まれています。

アトランティックフォレストは、南米のその他主要な熱帯雨林から長く孤立しており、極めて多様で、固有な植物と森林が混在しています。 ホットスポットの2つの主要な生態地域の一つは、アトランティックフォレストの沿岸林で、そこは、その地域の約20パーセントをカバーする沿岸沿いの約50-100キロメートルの細長い土地です。もう一つは内陸のアトランティックフォレストで、南部ブラジル山麓を横切って延びています。これらの森林は、内陸側に500-600キロメートル、海抜2000メートルも高い場所にまで及んでいます 。アトランティックフォレストの植生は、高度により、少なくとも3つあります。海岸平野の低地森林、山岳森林、高所の草原(campo rupestre)です。

セラード

ブラジルのセラード地域は、国土の21パーセントを占め、南米で最も広大な森林サバンナ地帯です。激しい乾季が生態的特徴を形作っており、干ばつや野火に適応した植物生態系と、驚くほど多種の固有の鳥類や、オオアリクイ、オオアルマジロ、ジャガー、タタガミオオカミなどの大型哺乳類も生息しています。しかしながら、近年、農業用地(主に、とうもろこしと大豆生産)の急速な拡大が進み、その生息地が脅かされる結果となっています。さらに、年間4千万頭もの牛を出荷するため、放牧も、大きな脅威となっています。

A jaguar patrols the Brazilian Cerrado
© Olivier Langrand

概説

セラード地域は、中央ブラジル高原の2,031,990 km²に渡って広がっています。アマゾンに継ぐ、ブラジルで二番目に大きな生態系を抱える、このホットスポットは、ブラジル国土の21%強を占めています。(パラグアイとボリビアも若干、含まれています。)南米で最も広大な森林/サバンナ地帯のセラードは、主にサバンナ、森林/サバンナ、乾燥林生態系から成る唯一のホットスポットでもあります。この地域には、潅木の混じるサバンナ、木々が点在する草原、セラダオ (cerradão) と呼ばれる森林など、異なる植生がモザイク状に広がっています。

また、厳密に言えば、セラードの典型的な形態ではない、河辺林もこの地域一帯で見られます。 

ホットスポットには、10-4月の6~7ヶ月月に集中して、大量の雨が降ります。(年間1,100~1,600mm)その他のシーズンは、非常に乾燥した季節のため、植物の多くは干ばつに強く、野火にも適応能力があります。これがセラードの環境に適応する重要な要素となっています。 

実際、植物相には、野火に強いことを示すいくつもの例(厚い樹皮、皮のような強い葉、急速な再生能力、地下深い根系など)が確認できますが、この適応能力は、草地と木質系の植生の間のバランスを維持し、栄養の再生と発芽を助けることにもつながっています。

ヴァルディヴィア森林(チリ冬季降雨地帯)

太平洋、アンデス山脈、アタカマ砂漠に囲まれ、陸の孤島と言えるこのホットスポットには、希少種を含む多様な現地固有の動植物種が生息しています。ナンヨウスギは、国定記念物に指定され、保護対象となっています。

また、このホットスポットでは、稀少なアンデスの猫、アンデスウサギ、アンデスコンドルが生息している他、爬虫類や両生類、淡水魚などの固有種の割合も、非常に高くなっています。

しかしながら、近年、過放牧、侵入種、および都市化によって、元来の生息地が破壊されてきました。現在、大規模な水力発電ダムと観光客誘致のための沿岸開発の2つは、チリの冬季降雨地帯(ヴァルディビア森林)が直面している大きな問題となっています。

Lago del Toro in Torres del Paine National Park, Chile
© Art Wolfe/ www.artwolfe.com

概説

西に太平洋、東にアンデス山脈、北にアタカマ砂漠に囲まれた事実上の大陸島である、チリの冬季降雨地帯(ヴァルディビア森林)には、固有で豊かな動植物が生息しています。 このホットスポットはチリの北西部とアルゼンチンのはるか西端までの39万7142のkm²を含み、太平洋岸からアンデス山脈の尾根まで広がっています。また、チリの国土の約40パーセントと、サンフェリックス島、サンアンブロシオ島、フェルナンデス諸島など、沖合いの島々も含んでいます。

チリの北部中央地域は冬が雨季である一方、南部チリの北方地域は、一年中雨が降ります。冬季降雨地域は、典型的な地中海性気候地域(155.000 km²)と冬季降雨砂漠の非常に乾燥した地域(14万5000のkm²)のほぼ2つに分かれています。

より北側にある冬季降雨砂漠地帯の植生タイプには、沿岸部の霧 (camanchaca) がかかる広大な砂漠一帯と、より南側内陸部の“砂漠の花” (desierto florido) が含まれます。その他の植生タイプとして、沿岸部と内陸側のマキー (matorral) やサバンナ、落葉樹林、標高の高い山岳植生などが見られます。また、 アンデス山脈ふもとの西側斜面と海岸山脈の東側斜面の典型的なマキー (matorral) は、太陽の差し込む森林で、豊かで固有の草本類と地中植物種が生息していますが、海岸山脈西側の、より湿潤な気候では、うっそうと茂った森林が広がっています。高所地域では、典型的な地中海性の硬葉植生として、ナンキョクブナ林 (Nothofagus) まで見られ、さらに、南緯39度以南から南部沿岸に沿っては、小さく突出した熱帯雨林が確認できます。

熱帯アンデス

地球上で最も豊富な生物資源を有する熱帯アンデス地域は、世界の地表面積の1%弱に過ぎない地域に、全世界の植物種の約6分の1が見られます。固有植物種には、100年に1度花を咲かせるというプヤ・ライモンディも含まれます。

絶滅危惧種であるキミミインコ、イエロー・テイル・ウーリー・モンキー、メガネグマは全て現地固有種です。このホットスポットは世界で最も多様な両生類を有し、664種が生息しています。残念ながらそのうちの450種が2004年度のIUCNレッドリストに絶滅危惧種として登録されています。

これらの生物が生息する森林は、その4分の1を残すのみで、採鉱、森林伐採、石油採掘、麻薬栽培などによって脅かされています。この地域の多くの大都市の発展のために、この脅威は拡大しています。雲霧林は水力発電のダム開発により破壊されつつあり、アフリカツメガエルや牛の放牧用の牧草などの外来種の移入も問題となっています。

Glass frog in Peru
© Trond Larsen

概説

地球上で最も豊富な生物資源を有する熱帯アンデス地域は、西ベネズエラから北チリ、アルゼンチンに広がる1,542,644km2もの面積を持つ地域で、コロンビア、エクアドル、ペルー、ボリビアの大部分を占めています。南は南回帰線から、北はコロンビアやベネズエラのアンデス地域まで拡がり、アンデス山脈や近隣山系の熱帯区域を含んでいます。西側は標高1,000mまで下に拡がり、トゥンベス・チョコ・マグダレナ・ホットスポットと隣り合っています。また東側は標高500mまで下に拡がり、アンデス山脈の斜面の森林地帯とアマゾン低地帯との境界線となっています。

アンデス山脈は雪山や急斜面、深い渓谷、点在する渓谷を持つために気温の高低差が大きく、微小な生息環境や生物種は驚くべき多様性を進化させてきました。このホットスポットは、ペルーの街・カバナコンデにある深さ3223mの世界一深い渓谷「コルカ渓谷 (Cañón del Colca) 」や、ペルーとボリビアの国境の街・アルティプラーノにある、標高3810mに位置し航行可能な湖として世界最高所の湖「チチカカ湖」を有しています。

ペルーの極北部のエクアドルとの国境線を通る東西方向の渓谷により、熱帯アンデスは北域と南域に分けられます。この渓谷はマラニョン峡谷 (Marañon Gap) あるいはワンカバンバ渓谷 (Huancabamba Depression) と呼ばれ、標高が約500m降下するために、動植物相の分散を妨げる重要な役目を担っています。北部では、アンデス山脈はコロンビア最高峰のシエラ・ネバダ・デ・サンタ・マルタ山脈 (Sierra Nevada de Santa Marta) を含むコロンビアの3つの山脈に分割されているため、元来このホットスポットは複雑に分断化されています。ベネズエラでは、アンデス山脈はラ・コスタ山脈 (Cordillera de la Costa)、カリペ山脈 (Cordillera de Caripe)、パリア半島 (Península de Paria) まで続いています。

このホットスポットには、標高の変化により様々なタイプの植物が分布しています。標高500mから1,500mには熱帯湿潤林が広がっています。標高800mから3,500mには様々な植生の雲霧林が広がり、ペルーやボリビアの面積の500,000km2以上を占める雲霧山林帯(ユンガス地域、セハ・デ・セルバ地域、あるいはセハ・デ・ラ・モンタナ地域)を含んでおり、地球上で最も豊富な生物資源を有する森林の1つです。3,000mから4,800mの高緯度帯には雪線まで草原と低木の植生が広がっています。これらの生態系は、寒冷で湿潤な北アンデス地域では、スポンジのような吸湿性の高いコケや芝生の厚いマット状に成長する高山植生のパラモを有し、寒冷で乾燥した南熱帯アンデス地域では、ハーブや芝生、スゲ、地衣類、コケ、シダに囲まれた高山性のバンチグラス種に象徴されるように、乾燥プーナを有しています。これらの主な生態系に加えて、このホットスポットには乾燥林や森林地帯、サボテン、有刺低木林、潅木林もあります。

トゥンベス・チョコ・マグダレナ

中央アメリカの最南東部から南アメリカ大陸の北西部にまで拡がる地域で、北を中央アメリカ、東を熱帯アンデスという2つのホットスポットに隣接しています。ハゲクビカザリドリ(bare-necked umbrellabird)や、色鮮やかなヤドクガエル(brightly-colored poison dart frogs)などが現地固有種で、エクアドル南部やペルーの極北に生息するハジロシャクケイ(The white-winged guan)は深刻な絶滅の危機に瀕しています。これらの生物種は都市化、密猟、森林減少などが脅威となっています。エクアドル沿岸部のマングローブ林では、急速に破壊が進み、元々の面積の2%が残るのみとなっています。
Close up of a flower, Choco-Manabi Corridor, Ecuador
© CI/photo by Haroldo Castro

概説

トゥンベス-チョコ-マグダレナ・ホットスポットは中央アメリカ南東端から南アメリカ北西端まで全長1,500kmに広がり、アンデス山脈の西側の海岸に沿った面積274,597km2の領域を占めています。以前はチョコ-ダリエン-ウエスタン-エクアドル(Chocó-Darién-Western Ecuador)ホットスポットと呼ばれていましたが、その後に北コロンビアの数ヶ所の新しい地域、特にマグダレナ渓谷を含むように拡大したために、現在の名称で呼ばれています。

ホットスポットは、パナマ運河から、パナマのダリエン県の湿潤林と乾燥林地帯まで、南と東方向に延び、コロンビア西部のチョコ地域やエクアドルの西海岸沿いの湿生林地帯を抜け、エクアドル東部とペルーの極北西部の乾燥林地にまで拡がっています。その一部は、東方面にシエラ・ネバダ・デ・サンタ・マルタに及ぶカリブ海沿岸の乾燥林を通ってコロンビアの西部・中央部の山岳地帯の北域まで拡がり、また南方面にカウカ渓谷とマグダリア渓谷まで続いています。それ以外にも、西側は大西洋に隣接し、また東側はアンデス山脈の西側斜面の標高1,000mの等高線に隣接しており、これは熱帯アンデス・ホットスポットとの境目となっています。これらの大陸領域に加えて、コロンビア沖のマルペロ島やエクアドル沖のガラパゴス島もこのホットスポットに含まれています。

このホットスポットは様々な生息環境を有しています。その範囲は、マングローブ、砂浜、岩石海岸、海岸原生地から、コロンビアのチョコ地域にある世界で最も湿潤な熱帯雨林にまで及んでいます。また、このホットスポットには南米で唯一の沿岸乾燥林も含まれています。比較的平らな海岸平野全体に多数の小さな山系が分散しているために、この地域に固有な“島”が進化しました。一般的に、このホットスポットは2つの主要な植物地理学的地域に分けることができます。北部のチョコ/ダリエン湿潤森林地域と、南部のエクアドル/ペルーのタムベシアン乾燥林地帯です。