Googleが支援する新たなクラウド・プラットフォームが明らかにする、世界で最も多様な野生動物カメラトラップの内容

12月 29, 2019

Male Lion (Panthera leo) in the Zambezi Region of Namibia

カメラトラップを利用した、野生動物たちの撮影記録データベースである「ワイルドライフ・インサイツ」は、人口知能(AI)の新たな活用により、450万以上のカメラトラップデータへのアクセスを可能にしました。


ワイルドライフ・インサイツに関わる保全グループは、450万以上におよぶ世界各地のカメラトラップの記録内容を公開しました。ワイルドライフ・インサイツは、世界中の野生動物たちについて、重要でリアルタイムに近い情報を提供する革新的なクラウド型プラットフォームです。

カメラトラップは世界中で使われている手法です。一日に何千枚もの写真を撮り、数多くの絶滅危惧種を含む野生動物の習性やその生息地について、科学者たちに他にない視点を与えてくれます。しかし、これらの情報には欠点もあります。画像を分類するには多くの時間がかかり、処理することも大変な作業です。
 
「テクノロジーによって、こうしたデータの収集は非常に容易になりましたが、必ずしもうまくアクセスすることはできませんでした」コンサベーション・インターナショナルの野生動物保全シニアサイエンティスト兼ワイルドライフ・インサイトのエグゼクティブディレクター、ホルヘ・A・アフマダは話します。「カメラトラップはいたるところで行われ、何百万もの画像が貯まっています。しかし、そのほとんどは、パソコンやデータベースの中に置かれたままです。これは、保全活動において、重大な機会の損失といえます」

これらの状況は全て、ワイルドライフ・インサイツのおかげで変わろうとしています。ワイルドライフ・インサイツは、グーグルが開発した人工知能技術を用いることで、研究者たちが動物種を一瞬のうちに特定するのを可能にします。それにより、情報が処理・分析される速度が劇的に向上し、政策決定者たちは即時性の高い情報を入手できるようになります。新しいワイルドライフ・インサイツは世界で最も多様なカメラトラップのデータベースであり、ユーザーはデータを動物種・国・年ごとにフィルターにかけながら、何百ものカメラトラップの記録を利用することができます。
 
このオン・デマンドデータとその分析は、幅広い保全活動へ知見をもたらすことができます。保護地域や密猟対策の責任者たちは、特定の野生動物の健康状態を測定することができ、政府は政策の決定に役立つデータにアクセスすることができます。ワイルドライフ・インサイツが公的に利用できるという点もまた重要です。
 
「私たちは特に市民科学者や学校の教師、そして子供たちにこのプラットフォームを活用してほしいと思います」とアウマダは話します。「彼らこそ、野生動物を守ることによる便益を将来受けとることになる世代なのですから」
 
このプラットフォームは、コンサベーション・インターナショナル、スミソニアン国立動物園、保全生物学研究所、野生生物保護学会、ノースカロライナ自然科学博物館、世界自然保護基金(WWF)、ロンドン動物学会、マップ・オブ・ライフ、そしてグーグルの協働によって運営されています。
 
ワイルドライフ・インサイツのローンチに合わせて、グーグルはコロンビアにあるアレクサンダー・ヴォン・フンボルト生物資源研究機構に所属するカメラトラッパーにフォーカスしたドキュメンタリーフィルムを製作し、公開しました。彼女らサイエンティストは、人里離れたコロンビアの北部アマゾン地域にあるカニョ・クリスタレス地域の生物多様性を記録・保存するためにワイルドライフ・インサイツを利用しています。グーグルはさらに、ワイルドライフ・インサイツ開発秘話の映像も公開しています。
 
カメラトラップデータは、選定された保全団体や研究者らが2020年早々からデータをアップロードし始めることで、収集が拡大すると期待されます。ここから、ユーザーが利用できるデータのサンプルを見ることができます。
 
ワイルドライフ・インサイツはまたゴードン&ベティ・ムーア財団、ライダ・ヒル慈善財団、そしてグーグルからの支援を受けています。
 
「健全な野生動物たちの群れなくして、人間は必要とする便益を自然から受け取ることはできません。野生動物がいなければ、森は炭素を少量しか貯蓄できず、草原は栄養循環のサイクルを壊し、植物は害虫により死滅してしまいます。人類は、自らもその一部である、惑星のエコシステム全体の保全を確実なものにするために、信頼でき、公にされた、そして現状を反映した野生動物たちに関する情報が早急に必要です。ワイルドライフ・インサイツは、何百万ものカメラトラップの画像を保全活動に組み込むためのまさに必要とされた解決方法です。それは、進歩した技術、データ共有、機関をまたぐパートナーシップ、そして科学に基づく分析の融合のおかげで可能となりました。ワイルドライフインサイツによって、保護地域の管理方法や、保全戦略上、原住民や地元住民をエンパワメントする方法、そして、政策決定者に最良のデータと科学的知見をもたらす方法が変わるでしょう。」 by ホルゲ・A・アフマダ、ワイルドライフ・インサイツエグゼクティブ・ディレクター兼シニア野生動物保全サイエンティスト
 
プラットフォームのデモはこちらから利用できます。このプラットフォームを利用することにご関心のある団体は、info@wildlifeinsights.org までご連絡ください。
 
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コンサベーション・インターナショナル(Conservation International:CI)ついて
CIは、自然を守ることによって持続可能な社会の構築を目指す国際NGOです。科学、パートナーシップ、現場での実践を3つの柱とし、人間が生きていくのに欠かすことのできない食料、水、生計を生み出している自然を守っています。1987年の設立以来、31か国70以上の国や地域で活動しています。
 
スミソニアン国立動物園と保全生物学研究所(Smithsonian’s National Zoo and Conservation Biology Institute)について
スミソニアン国立動物園と保全生物学研究所は、スミソニアン協会による国際的な種の保全、エコシステムの考察、将来の保全スペシャリスト養成を主導しています。国立動物園は、来場者とかけがえのない動物たち、そして彼らを守る人々をつなぐ場所です。バージニア州フロントロイヤルと世界30か国以上の国で、スミソニアン保全生物学研究所の科学者と動物ケアのスペシャリストは、動物の行動と生殖、生態、遺伝、移動、持続可能な保全の知識を応用し、共有することによって、最も複雑な保全の課題に取り組み、野生動物と野生動物のすみかを守っています。
 
世界自然保護基金(World Wide Fund for Nature)について
世界自然保護基金(WWF)は、3千万人以上のフォロワーと約100か国のグローバルネットワークを持つ独立した環境保全団体です。WWFのミッションは、世界の生物多様性を保全し、再生可能な天然資源の利用を持続可能なものにし、汚染と無駄な消費の削減を促進すことによって、地球の自然環境劣化を食い止め、人間と自然が調和して生きる未来をつくることです。
 
ノースカロライナ自然科学博物館(the North Carolina Museum of Natural Sciences)について
自然世界を“きらめかせ”、保全をインスパイアする、というミッションのもとに、ノースカロライナ自然科学博物館は1879年に設立しました。自然歴史博物館と科学技術センター、子供の博物館、水族館と動物園が一体化した体験型施設には年間100万人の訪問者が訪れています。ノースカロライナ州自然文化資源セクション元でスミソニアン協会にも加入しているノースカロライナ自然科学博物館は、米国に3つしかないスミソニアン科学教育センターのパートナーでもあり、科学的な知識を持ったスタッフと世界的に著名で多様な科学分野の専門家が所属しています。
 
ロンドン動物学会(Zoological Society of London)について
ロンドン動物学会(ZSL)は野生動物が繁栄する世界をつくるために活動している国際的な保全活動団体です。野生動物が直面している健康面の脅威に関する調査から、野生動物と近隣で暮らす人々を支援するなど、野生動物たちを絶滅の危機から守るために活動しています。ZSLの活動は、ZSLロンドン動物園とZSLウィップスネード動物園に従事する人々の革新的な科学技術と世界各地のフィールドにおける実践、Zによって支えられています。
 
野生生物保護学会(Wildlife Conservation Society)について
野生生物保護学会(WCS)は、科学と保全活動、教育によって自然の価値を人々へ啓発し、野生動物とその生息環境である自然を守っています。ブロンクス動物園を拠点とするWCSは、約60か国と海で実施されている、「グローバル・コンサベーション・プログラム」の知恵を結合し、毎年400万人が訪れるニューヨーク市の5つの野生生物公園でそれを活用しています。 WCSは、フィールド、動物園、水族館の専門知識を組み合わせて、その保全ミッションを達成します。
 
マップオブライフ(Map of Life)について
マップオブライフは、種の個体数のマッピングとモニタリングのためのグローバルな共同リソースです。データと研究者らのネットワークを通して、生物の発生分布と世界的に生物がどのように変化しているのか、最も優れた情報を最新のモデリングアプローチを用いた生物多様性空間データによって提供しています。マップオブライフの情報、インジケーター、ツールは生物多様性の研究、教育、モニタリング、意思決定をサポートし、国際的な条約とアセスメントのプロセスの報告に貢献しています。
 
ゴードン・アンド・ベティ・ムーア財団(Gordon and Betty Moore Foundation)について
ゴードン・アンド・ベティ・ムーア財団は、画期的な科学的発見や環境保全、患者ケアの改善とカリフォルニア州サンフランシスコのベイエリアの特別種の保全を後押ししています。
 
リダ・ヒル慈善財団について
リダ・ヒル慈善財団(Lyda Hill Philanthropies)は、創設者であるリダ・フィルによる寄付を元に、リダ・ヒル本人による社会貢献活動含む、活動を支援するための基金です。科学と自然の変革の進歩に資金を提供し、非営利団体を支え、テキサスとコロラドのコミュニティの改善に取り組んでいます。
 

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磯部 麻子

Marketing and Communications, Senior Coordinator

CIジャパン

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