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KBA (Key Biodiversity Area): 
生物多様性保全の鍵になる地域

KBA: Key Biodiversity Areaは、生物多様性の保全上重要な地域を把握するための国際基準の一つで、危機性(世界的に絶滅の危機に瀕した種が生息する地域は重要、という考え方)と非代替性(ある種の存続が特定の場所に依存してる場合、その場所は重要、という考え方)を指標として選定しました。

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 KBA選定基準                                

基  準

KBAとする暫定条件

 危機性 (Vulnerability)
IUCNのレッ​ドリストの絶滅危惧種(CR、EN、VU)に分類さ​れた種が生息/生育する。

・CR、ENに該当する種が1個体でも存在するサイト
・VUにあたる種が30個体、あるいは10ペア以上存在するサイト​​

 

 

  

非代替性 (Irreplaceability)

a) 限られた範囲にのみ分布している種

・世界で50,000km2以下の限られた範囲にしか分布しない種の個体数の5%が集中して分布するサイト

b) 広い範囲に分布するが特定の場所に集中している種

・世界的な個体数の5%以上が集まるサイト
(例:ヌーの分布域は広大だが、ある特定の場所に集中して分布する)

c) 世界的にみて個体が一時的に集中する重要な場所

・世界的個体数の1%がある特定の季節(時期)に集まるサイト
(例:繁殖地や大集団が一時的に利用する場所=越冬地や摂餌場所。ある種が特定の時期に集中して移動する場所など)

d) 世界的にみて顕著な個体の繁殖地

・他の個体群への個体の供給数が、全世界の個体数の1%以上を占める個体群がいるサイト(メタ個体群の維持に重要なサイト)

e) バイオリージョンに限定される種群

・基準定義中(分類群、地域により  様々)

 

KBAの成り立ち

KBAは国際NGOのバードライフ・インターナショナルが1980年代初期から取り組んできたIBA(Important Bird Area/日本では「重要野鳥生息地(日本野鳥の会)」)を基礎に選定基準が設けられ、鳥以外の分類群も含めて重要地域を選ぶ取組に発展したものです。

参考文献:Langhammer, P.F., M. I. Bakarr, L. A. Bennun, T. M. Brooks, R. P. Clay, W. Darwall, N. De Silva, G. J. Edgar, G. Eken, L. D. C. Fishpool, G. A. B. de Fonseca, M. N. Foster, D. H. Knox, P. Matiku, E. A. Radford, A. S. L. Rodrigues,
P.Salaman, W. Sechrest & A. W. Tordoff (2007). Identification and Gap Analysis of Key Biodiversity Areas: Targets for Comprehensive Protected Area Systems. IUCN Best Practice Protected Area Guidelines Series No. 15. IUCN, Gland, Switzerland.

Eken, G., L. Bennun, T. M. Brooks, W. Darwall, L. D. C. Fishpool, M. Foster, D. Knox, P. Langhammer, P. Matiku, E. Radford, P. Salaman, W. Sechrest, M. L. Smith, S. Spector & A. Tordoff (2004). Key Biodiversity Areas as site conservation targets. BioScience. Vol. 54: 1110-1118. 

日本国内のKBA

次の図のように、上記の基準を満たす地域を選びました。鳥類については、IBA/重要野鳥生息地をそのままKBAに取り込んでいます。

 

日本全体で228か所、国土の18%にあたる66,000km2がKBAに選ばれました。保護地域を、自然公園(国立公園、国定公園、都道府県立自然公園)、鳥獣保護区(国指定、都道府県指定)、原生自然環境保全地域、自然環境保全地域、森林生態系保護地域とすると、KBAの約半分は保護されていない地域になります。

生物多様性保全におけるKBAの重要性:KBAと愛知ターゲット

生物多様性条約の「愛知ターゲット」では、保護地域について下記の目標を掲げています。

 『2020年までに、少なくとも陸域及び内陸水域の17%、また沿岸域及び海域の10%、特に、生物多様性と生態系サービスに特別に重要な地域が、効果的、衡平に管理され、かつ生態学的に代表的な良く連結された保護地域システムやその他の効果的な地域をベースとする手段を通じて保全され、また、より広域の陸上景観又は海洋景観に統合される。』  (目標11、環境省仮訳)

この目標に取り組むにあたり、生物多様性と生態系サービスの観点から特に重要な地域を明らかにすることが求められ、KBAはまさにその手法の一つです。現在、日本の保護地域(上記)は国土の20%を占めていますが、KBAの総面積の約半分は保護されていません。愛知ターゲット達成のためには、日本は、既存の保護地域と合わせて国土の少なくとも28%について、社会・環境状況に応じた適切な保護・管理を実施する必要があると言えます。

KBAだけが重要地域か?

KBAは、世界的な観点での保全活動を優先的に進めるべき重要地域を明らかにすることを目的とし、世界で統一された基準によって選んでいるものですが、KBAに選ばれていない場所が重要ではない、ということではありません。生物多様性の評価は、KBAが採用している危機性や非代替性以外にもたくさんありますし、地域の視点から見て重要なものもあります。実際、KBAの保全には、地域での活動が不可欠ですので、KBAの視点以外の重要地域も組み合わせていくことで、結果としてより効果的な保全、そして生物多様性全般の保全に繋がるものと考えています。