各国間で深まる溝;優先順位と遅延行為により、世界的な保障問題である国連気候変動会議の交渉が危機に
 
コンサベーション・インターナショナルによるCOP18総括
影響の高まる気候変動に対し、共通の野心を持って立ち向かえない国家
革新的なリーダーシップと解決策が緊急に必要



カタールで2週間にわたり開催された気候変動枠組み条約第18回締約国会議(COP18)は、全般にわたり実績に乏しい結果に終わりました。コンサベーション・インターナショナル(CI)は世界のリーダー達が気候変動問題に対し迅速に責任ある行動を起こすことができず、世界的に起こっている気候変動による人々への脅威に対して、必要な妥協点や資金提供ができなかったことに、大きな失望の意を示します。つい最近、地球上で2つの歴史的な大嵐が起こり、人々の命や生計に甚大な被害を与えた事が報じられました。気候変動の危機に対応する努力をするために、国連の枠組みに加え、地域、国家、企業による資力を倍増し、衡平で野心的な世界的合意を2015年に達成し、地球上の生命のサポートシステムへのさらなる被害を回避しなければなりません。

 
プロセスを重視する今回の会合への期待度は当初より低く、京都議定書の第2約束期間が20132020年で最終的に一部の締約国間で合意されたものの、CIのドーハ会議参加団は、「ドーハ合意(Doha Climate Gateway)」に至る進捗と結果は大変不適切なものであったと分析します。交渉が結論に至るまで、まる一日ずれ込む結果となりました。締約国は、資金的な責任、排出削減目標、気候変動による影響がより高まる以前に適応行動を動かすための交渉で、激しく対立しました。COP18は、カンクンとダーバンで築いてきた目標を達成し、気温上昇を2℃未満に抑えるために温室効果ガスを抑制するため、2015年に野心的な条約の道筋を見出すにははるかに及びませんでした。2℃未満に気温上昇を抑えることは、科学的に水資源、食糧、経済保障と人間の幸福を維持するために危険な転換ポイントとされています。

CIの国際政策担当、上級執行役員のフレッド・ボルツ博士は、「今回の会合が大きな転換期となる事は誰も予測していませんでした。一方、既に現実に起こっている、最も脆弱な国々が気候変動による影響に対処していくための資金を維持していくことも含め、事実上重要な課題に全く意味のある進展が見られませんでした。会議は、来年交渉を継続するという事実だけを達成しました。気候変動の課題の深刻性と緊急性を考えると、この結果は理解しがたく、無責任です。」と述べています。

世界全体が参加する気候変動条約に合意する事を、昨年南アフリカで各締約国が合意した2015年まで、たった3年間しか残されていません。各国は重要な決定や投資をぎりぎりまで、もしくはそれ以降まで延期する兆しを見せているかのようです。
 
「すでに世界の氷河が溶け出しているにも関わらず、会議へ参加した世界中の国々は、氷河が堆積していくようなペースで交渉を続けている、という事実は恐怖を覚えるほどの皮肉です。各国が緊急性を持って行動し、解決を見出すことに失敗し続けているのは明白です。気候変動による脅威は明白です。取り返しのつかない被害を避けるための時間がどんどん限られてきている事を証明する、科学的な証拠は増え続けています。国連は国家の集合体であるため、非難や責任がうやむやになりがちです。今回のドーハで、我々は、国家間の溝が深まり、緊急な地球の課題に対応する事ができない事実を目のあたりにしました。各国が自らの「国益」を最優先し、自分たちに共通の課題があることを忘れています。我々全員を崖っぷちへ追い込むようなゲームを演じているのです。」

■京都議定書
200カ国近くが参加した今回の会議での最低限の達成は、京都議定書を2020年まで継続するという採択でした。しかしながら、第2約束期間には、温室効果ガスの大排出国である数カ国が参加しないため、世界排出量の約15%への効力を持つにすぎません。
CIの気候変動政策シニア・ディレクターのレベッカ・チャコは、「最後の最後で、各国が京都議定書の更新に向け歩み寄ったのには、安堵を覚えました。なぜなら、大排出国が参加していなくとも、京都議定書は現在唯一の法的拘束力のある合意であるため、維持する事が大変重要であり、2015年に世界的な条約を達成する際も学ぶべきことが多くあるからです。」と述べます。
 
■資金支援と適応の拡大
CIは、ドーハの会議において、2009年のデンマーク・コペンハーゲンで約束された「初期支援」と呼ばれる支援額の倍増、つまり、2013年~2015年までの間で少なくとも600億ドルの新規で追加的な資金調達を強く求める声明を他団体とともに表明しました。国連によって設置されたメカニズムで、未だに資金の目途の立たない「緑の気候基金」を機能させることは、途上国における緊急を要する緩和・適応策に資金を提供するために重要です。
いくつかの国が、緑の気候基金のための新たな拠出を表明したリーダーシップと貢献については評価されるべきものの、現実的な金額としては、短期的にはほとんど何もできないという状態です」とチャコは言います。「現在の約束はたったの50億米ドル。いくつかの国では、自然災害からの回復のための援助資金を見つけることに必死である一方、先進国がより積極的かつ予防的な意味で投資することができないのは皮肉なことです。先週、フィリピンで見られたような、壊滅的な台風はより巨大に、より頻繁に観測されています。そして、より費用のかかるものになってきているのです。経済的にのみならず、測る事のできない意味においても、です。」
自然に本来に備わっている防御システムを利用すれば、解決策は手に届くところにあります。自然の防御システムは、社会が存続し、社会が地球規模の気候変動の影響に適応するのを助けます。 例えば、マングローブ、森林、河川流域やサンゴ礁などの自然生態系は、いわゆる緑のインフラを強化する事で回復力を構築する、人々を守るために最も迅速かつ費用対効果の高い手段の一つです。これらを利用することを、『生態系機能を利用した適応策(EbA)』と呼びます。
いったん災害が発生すると、国はただの計算問題のように扱えません。もし分析すれば、壊滅的な大災害の後の多大な復興費用を払うよりも、上述のような気候変動の解決策に投資したほうがはるかに賢いことがわかるでしょう。」
 
REDD+
REDD+(森林の減少と劣化に由来する排出の削減)緩和策に関しては、途上国が森林を維持する事に対してインセンティブを支払う国連のスキームであるREDDに関する技術的な決定が、より政治的なものとなり、議論が行き詰まりを見せました。資金調達の問題と、各国がどのように炭素排出の回避を計測し、検証するかというスキームに関する議論が、翌年の会議へ委ねられました。REDD+に関する議論がここまで混乱した会議は初めてで、それは技術的な理由でなく、政治的な理由に起因しています。ドーハにおける進捗は、現在の断片的なアプローチから、必要とされる地球的規模まで、REDD+を梃子にスケールアップするためのカギとされていました。温室効果ガスの排出の原因の16%が森林破壊に起因しており、REDD+は、短期間で気候変化の影響を減少させる最良の方法の一つであると同時に、絶滅の危機に瀕する生物種を保全し、森林を有する国家のコミュニティへ社会的な便益をももたらします。

議論の決着をつけることは容易ではありません。「私たちはここで、変革について話し合っているのです。しかし、変革は私たちが必要とすることで、我々の存続はそれにかかっています。」
CI
ジャパンの気候変動プログラム・ディレクターの山下加夏は、「今まで、森林や地元コミュニティを守るためのインセンティブを形成するために、様々な努力がなされてきましたが、全世界で法的拘束力を持って取り組めるようなものは生まれていませんでした。グローバル化が進む世界において、REDD+は地球上の森林や生物多様性を守るための、最後の砦の一つです。」と述べています。


今後の対策
ボルツ博士は、国連は、気温上昇を2℃未満に抑えるために、人々が必要とする世界的な行動について話し合う場でありますが、国連だけが気候変動について話し合う場ではないことを認識することが重要であると付け加えます。また、気候変動に対応するために、社会の他のセクターを巻き込みながら、より速く代替的なプロセスの動因を増加させる必要性を強調します。
 
UNFCCCは、グローバルな協議の場として土台を築く努力をする場ではありますが、制限を定義づける場ではない事を認識する時です。UNFCCCは、最低限の目標を設定できるとともに、より野心的な行動へのインセンティブを動機づける場であると、我々は信じています。その目標を達成するまで、UNFCCCは、企業の努力、積極的な国家、市民社会や地元政府がよりスピードをもって、気候変動の危機に立ち向かうための革新や勇気を削ぐものとなってはなりません。気候変動のスケールは、大きな指導力を必要としています。誰もが行動を起こさなければなりません」とボルツ博士は今回の結果をまとめています。
 
 
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