人類が守るべき場所が明らかに~気候危機を回避するために重要な新たなマップを発表~

11月 19, 2021

バージニア州アーリントン(2021年11月19日):
コンサベーション インターナショナルが本日発表した新たな調査結果から、気候危機を回避するために人類が保護しなければならない場所が明らかになりました。これらの生態系には、私たちが 「回復不可能な炭素(Irrecoverable Carbon)」 と呼ぶものが含まれています。「回復不可能な炭素」とは、複雑な自然生態系に貯蔵されている炭素のうち、伐採など人間の活動によって破壊されることで生態系から炭素が放出された場合、世界が目指す、最も危険な気候変動の影響を回避するための目標年までに再び生態系に吸収されることができない炭素のことです。今回発表された「回復不可能な炭素」マップは、そのような炭素を多く蓄積する生態系の場所、すなわち、気候危機回避のために失うことができない生態系地域を示しています。

 

「Nature Sustainability」 誌に発表された新しいグローバルマップは、「回復不可能な炭素」の概念を導入した画期的な研究 に基づき作成されています。今回の研究により、地球上の「回復不可能な炭素」の約半分は、わずか3.3%の土地に集中していることがわかりました。その主なものは、原生林、泥炭地、マングローブです。この膨大な炭素貯蔵量は、昨年の世界の化石燃料排出量の15倍に相当します。
 
どの生態系に「回復不可能な炭素」が貯蔵されているか知ることは、各国政府が2030年までに気候対策を進める上で、大きな効果が期待できる重点的に保護すべき場所を特定することにつながります。主要な地域の保護区をわずか5.4%増やすだけで、地球上の「回復不可能な炭素」の75%が大気に放出されるのを防ぐことができるということが分かっています。
 
本研究の筆頭著者であるコンサベーション・インターナショナルのモニカ・ヌーンは、「私たちは今、気候変動対策の極めて重要な時期にいます。科学と解決策が揃い、かつ、緊急性も高いのです。」と述べています。「『回復不可能な炭素』が比較的狭い土地に集中していることを知ることは、気候危機への対応に不可欠である生態系を保護する指針となるでしょう。」 
 
また、本日発表されたCIの別添報告書によると、これらの「回復不可能な炭素」地域の多くは、生物多様性の高い地域と重なっていることが明らかになりました。つまり、気候の安定に不可欠な地域を保護することは、多様な種の哺乳類、鳥類、両生類、爬虫類の生息地を保護することにもつながることを意味します。報告書では、「回復不可能な炭素」が大気中に放出されることなく、これら重要な生態系に確実に留め置かれるために「『回復不可能な炭素』保護区」の創設を提案しています。
 
最大かつ最も密度の高い「回復不可能な炭素」生態系には以下のような地域が含まれます;
• アマゾンの熱帯林と泥炭地(31.5ギガトンの「回復不可能な炭素」)
• コンゴ盆地(同8.2ギガトン)
• 東南アジアの島々(同13.1ギガトン)
• 北アメリカ北西部の温帯林 (同5.0ギガトン)
• 世界のマングローブ、海草、潮間帯の湿地帯(4.8ギガトン)
加えてこの研究では、人間活動や気候変動に対して「回復不可能な炭素」がどれほど脆弱であるか、そして先住民族や既存の自然保護区にどれほど蓄積されているかについても明らかにしています。主な研究結果は次のとおりです;
 
  • 世界の「回復不可能な炭素」の52%は、現在、正式な保護や管理下に置かれていない。
  • 「回復不可能な炭素」の3分の1以上(467億ギガトン)は、各国政府が認定する先住民や地域コミュニティが管理する土地に蓄積されている。
  • 生態系・地域別では、マングローブ(平均218トン/ヘクタール)、熱帯泥炭地(193トン/ヘクタール)、北半球の湿地帯(173トン/ヘクタール)に、「回復不可能な炭素」が最も集中している。
 
 
本研究では、農業、伐採、森林火災によって、過去10年間だけでも少なくとも4ギガトンの「回復不可能な炭素」が大気中に放出されたことが明らかになりました。これはその期間の化石燃料の燃焼による人為的な排出量合計の5%に相当します。「回復不可能な炭素」への脅威は、生態系や場所によって異なりますが、最も差し迫った広範なリスクは、既存の保護区の法的効力を弱める法改正や農業や開発のための土地利用変化、森林火災や異常気象など、気候変動に起因する影響であると指摘しています。
 
コンサベーション・インターナショナルのチーフサイエンティストであり、気候と持続可能性研究の第一人者である、ポツダム気候影響研究所共同所長ヨハン・ロックストローム博士は、「蓄えられた炭素を放出すれば、その影響は何世代にもわたって続くため、自然と人類にとって許容できるレベルで地球の気候を安定させるために私たちに残された最後のチャンスを損なうことになります。私たちは、炭素吸収源としての地球の機能を守るために、今すぐ行動しなければなりません。それには、このような固有の生態系の保護を優先することが含まれます。」と述べます。
 
この研究の共著者であるコンサベーション・インターナショナル気候保護担当ディレクターのアリー・ゴールドスタインは、「排出量を半減させ、気候と生物多様性が取り返しのつかない転換点に到達するのを防ぐには、あと10年もありませんが、幸いなことに、まだその水準には達していません。これは、環境災害を未然に防ぐために必要な時間と情報があるという、極めてまれなケースです。私たちの研究によれば、『回復不可能な炭素』生態系の保全に投資することは、気候の健全性、生物多様性の健全性、そして最終的には人類の健全性を向上させることができる、Win-Win-Winのアプローチです。」と述べます。
 
この論文の共著者であり、ネイチャー・コンサーバンシーの上級森林再生科学者である、スーザン・クック・パトン氏は、「今年のグラスゴーUNFCCC-COP26で合意されたコミットメントを考えると、このグローバルマップは、気候政策立案者の科学ツールキットに貴重な付加価値を与えるものです。」といいます。「特に、取り返しのつかない被害が差し迫る『回復不可能な炭素』貯蔵地域の保護を、各国政府が早急に進めることが重要です。このマップは、手遅れになる前にそうした場所を特定するのに役立つはずです。」
 
回復不可能な炭素の利点を確保するために、本報告書では次のように提言しています;
 
  • 地球上の「回復不可能な炭素」の3分の1以上を管理しながら、同時にそうした地域に対する脅威が増大している先住民コミュニティを支援すること。
  • 現存する「回復不可能な炭素」を貯蔵する生態系を破壊するような政策や活動を直ちに中止すること。
  • 保護区創設、先住民やコミュニティ主導の保全策を適用し、「回復不可能な炭素」を含む生態系保全地域を拡大すること。
  • 各国政府、地球環境ファシリティ、緑の気候基金、世界銀行など多国間基金の戦略において、「回復不可能な炭素」が集中している地域を優先すること。
  • 火災や害虫管理、洪水や高潮を軽減する沿岸や、淡水の供給源である湿地帯の保護など、持続可能な開発と気候変動への耐性を促進する、包括的で関係者間の相互協力が促される土地利用計画を設計すること。
 
コンサベーション・インターナショナル、ネイチャー・コンサーバンシー、ワイルドライフ・コンサベーション ソサエティ、ポツダム気候影響研究所、ウィスコンシン大学マディソン校の科学者が執筆した本研究の全文は、こちらをご覧ください。
 

日本、その他地域の調査結果は専用のCIウェブサイトをご覧ください。

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◆コンサベーション・インターナショナルについて
コンサベーション・インターナショナル(CI)は、自然が人々にもたらす重要な便益を守るために活動しています。 科学、パートナーシップ、フィールドワークを通じて、気候危機に対する自然に基づくソリューションへのイノベーションと投資を推進させ、重要な生息地の保護を支援しながら、自然保護に基づく経済発展を促進します。 世界30か国で、あらゆるレベルで社会を活性化させながら、よりクリーンで健全で持続可能な社会を作ることを目指しています。

 
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