インドビルマ(インドシナ半島)
​A waterfall in the Cardamoms, Cambodia.
© CI/Photo by Jake Brunner
 
熱帯アジアの200万kmの面積を占めるインドビルマ・ホットスポットは、現在も世界的に注目される生物の宝庫です。過去わずか10数年の間に発見された大型哺乳類は6種(3種のホエジカ、ドゥクモンキーの一種、ウサギの一種、レイヨウの一種であるサオラ)にのぼり、固有種の淡水カメ類も数多く生息していますが、そのほとんどが乱獲と生息地破壊により絶滅の危機に瀕しています。鳥類相もきわめて多彩で、ハイナンミゾゴイ、ワキフチメドリ、サイゴンミヤマテッケイなど1300種を数えます。






概説

インドビルマホットスポットはガンジス・ブラマプトラ平原の東に広がる237万3千kmの熱帯アジア地域にあります。かつてはネパール・ブータン・インドにまたがるヒマラヤ山脈とその周辺の山系も含めていましたが、現在、狭義の定義には、インドシナ地域を指しています。このホットスポットにはメコン川下流の集水域が含まれ、具体的にはバングラデシュ東部と北東インド、ブラマプトラ川の南岸を西端とし、ミャンマーのほぼ全域、中国の雲南省の一部、ラオス・カンボジア・ベトナム全土、タイのほぼ全域とマレーシア半島のごく一部と、中国南部沿岸の平野部(広西チワン族自治区と広東省)と沖合の島嶼地域(中国の海南島やインドのアンダマン諸島)をカバーしています。

インドビルマのホットスポットはスンダランドホットスポットに接し、その境界はカンガーからパッタニーにかけて(Kangar-Pattani line)のタイ-マレーシア国境ですが、フタバガキ科の常緑多雨林から湿性混合落葉樹林へゆるやかに移行していることから、スンダランドからインドービルマへの動植物相の移行地点はもう少し北のクラ地峡だとする分析もあります。

インドビルマの大部分は、季節によって気候パターンが全く異なる特徴があります。北部の冬の時期は、アジア大陸の安定した高気圧から、乾燥した冷涼な風が吹きつけるため、ホットスポットの南部・中央部・西部のほとんどは乾燥し晴天が続きます(乾燥北東モンスーン)。春になると、大陸性高気圧の勢力が弱まり、風向は逆転するため、南西モンスーンを形成する空気塊が海からの水蒸気を集め、丘陵や山脈にそって上昇し、大量の雨を降らせます。

インドビルマの生態系は多様性に富み、湿潤常緑樹林、乾燥常緑樹林、落葉樹林、山地林に代表されます。また、石灰岩が露出したカルストにはパッチ状の灌木林が、沿岸の一部にはヒース林が点在しています。加えて、インドービルマ特有の多様な局所的植生として、氾濫原湿地、マングローブ、季節浸水草原が見られます。