アフリカ・マダガスカル

生物多様性ホットスポット

 

ケープ植物相地域

Different Erica species
© CI/Haroldo Castro

山火事に強い常緑の低木地帯は、世界で5つある地中海地域のホットスポットのうちの一つ、ケープ植物相地域の風景の特徴を現しています。世界の非熱帯地域の高等植物の植生地としては世界屈指であり、ホットスポット全体が『花の王国』を形成しています。南アフリカの12の固有植物系のうち5つと160種の固有種が生育しています。

ホシャブガメ、南アフリカマミジロミツドリや数々のアンテロープは、ケープ植物相の特徴を表しています。

概説

アフリカ大陸のはるか南西端の海岸線に沿って延びている、78.555 km²のケープ植物相のホットスポットは南アフリカの国境地帯の内側全体に位置しています。これは、ホットスポットのリストのうち、5つの温暖な地中海性気候地域の一つであり、『花の王国』を形成する2つのホットスポットのうちの一つです。(もう一つはニューカレドニア)。

ケープ植物相地域の植生は、フィンボス(アフリカーン語で"細い木"という意味)、いわゆる、岩でゴツゴツとし、砂っぽく栄養不良の土壌でも成長する、葉つきが硬く、常緑で、燃えやすい低木からなる灌木地帯です。この地域は緑豊かな熱帯雨林にかつては覆われていましたが、1500万年前頃の気候変動により、後退し、木々は、燃えやすい硬葉植物に取って代わり、定期的に火災が発生することが、生態系プロセスの中で、欠かせないものとなりました。

ケープには、非フィンボスの植生も含んでいます。これらのうち、レノスターフェルド(アフリカーン語で“草原のサイ”を意味し、以前は生息していたが、現在、この地域では絶滅している、クロサイ:Diceros bicornis がいたことを意味しています。)は、最も広大な面積を誇り20. 000 km²をカバーしています。この植物群は、低木の灌木層からなり、通常は草地が何層にも重なり、季節によっては 球根類が芽を出す、南アフリカ特有の常緑植物(Elytropappus rhinocerotis)が大部分を占めています。

今日、ケープ植物相の風景の中では木々が見られることは非常に稀であり、森林と呼べるものは面積にして3850 km²ほどしかなく、南部の沿岸の前地や山のふもとに近い傾斜面など、通常、湿度があり、火災に強い地域に見られるのみです。ケープ植物相の森林は、10~30mの高さがあり、本来は、熱帯アフリカ高山に見られる山地林の飛び地です。

 

 

東アフリカ沿岸林

東アフリカ沿岸林を形成している原生林は、小さく分断されてはいるものの、非常に高い生物多様性を有しています。世界の室内用鉢植え植物市場規模は1億ドルとも言われていますが、それを支えているのが、4万種にのぼるセントポーリアの栽培であり、それら全ては、タンザニア沿岸部およびケニアの森林で発見された種から派生したものです。

また、このホットスポットは、様々な霊長類種の生息地でもあり、この土地固有で、絶滅の危機が高いサル3種と、2種のキツネザルが含まれています。また、ケニア中央部を流れるタナ川は、非常に絶滅危機度が高い霊長類2種、タナリバーアカコロンブスと、タナリバーマンガベイの生息地です。

農業の拡大は依然として、東アフリカ沿岸林が直面する、大きな脅威となっており、土壌がやせ、人口が増加する中で、零細農業、商業的農業が、その地域の自然の生息地をますます、悪化させています

概説

東アフリカ沿岸林のホットスポットは、アフリカの東端に沿って南ソマリアのジュバとシュベル川に沿った沿岸(川辺)林の小さ断片から始まり、ケニアを南下し、幅約40キロメートルの比較的細長い沿岸に広がっています。(内陸に約120km広がるタナ川沿いは除く)

ホットスポットはさらに南下し、タンザニアまで延び、(主要部から離れた森林は、約300km内陸に分布しています。)ほぼモザンビークの海岸全体に沿って、リンポポ川まで続いています。(その南側はマピュタダンド・ポンドランド・オーバーニーのホットスポットです)。また、モザンビーク沖のペンバ島、ザンジバル島、マフィア島、およびベザルト諸島などの沖合の島々も含んでいます。

ホットスポットの植生は、湿地林、乾燥林が複雑に交じり合い、沿岸の低木や野火極相(火災が支配的な制御要因であるような極相群落)のサバンナ森林地帯、季節性湿地帯と永久的湿地帯、およびマングローブ植生を含む沿岸の生息地などが含まれます。 沿岸の植物相は、木々で覆われていますが、つる植物も潅木、ハーブ、草地、スゲ、シダ、および着生植物と同じくらい、よく見られます。 沿岸林は、通常、標高500mまでですが、タンザニアのハンデニ丘陵では標高1,030mまで確認できます。

天候は主に熱帯ですが、南部地域の一部は、ほぼ亜熱帯気候の地域になっています。 ホットスポットは、高温で湿度も非常に高く、雨季は、北部で2回(長期:4-6月、短期:11月-12月)、南部では1回(11月-4月)あります。年間降水量は、沿岸林のほとんどが、900―1,400mmですが、ペンバ島とマフィア島の約2,000mmから、北ケニアの約500mm/年まで様々です。

 

東アフリカ山岳地帯

© John R Watkin

東アフリカ山岳地帯のホットスポットは、アフリカの東端に沿って、北はサウジアラビアから、南はジンバブエまで分布しています。地理的に異質であるにも関わらず、ホットスポットを構成する山々は非常に類似した植物相が見られます。アルバーティーン地溝には、アフリカの他のどの地域よりも多くの固有の哺乳類、鳥類、両生類が生息しています。

このホットスポットにある山々を構成する複雑な地形は、世界でも類まれな巨大な湖、tanganyika湖 を作り出しました。この大きな湖のおかげで、東アフリカ山岳地域では、非常に多種多様な淡水魚が確認され、現在、617種の固有の魚類の生息地となっています。

多くの熱帯地域に見られるように、この地域の主要な脅威は、農業の拡大、とくに、バナナ、豆、紅茶のような、大規模プランテーションによるものです。もう一つの比較的新しい脅威は、人口増加に伴い、野生動物の肉の取引が増えていることです。これは特にアルバーティーン地溝では顕著な問題となっています

概説

東アフリカのホットスポットは、幅広く点在しつつも、北はサウジアラビアとイエメン、南はジンバブエまで、生物地理学上、東アフリカの同系の山脈に囲まれています。100万km²以上のホットスポットは主に、3つの古代大山塊で出来ています。:一つ目が東アーク山脈と南部地溝で、ケニア南東部からタンザニア南部とマラウイに延び、東ジンバブエと西モザンビークには小さな外座層があります。二つ目はアルバーティン地溝で、ルワンダ、ブルンジ、ウガンダ、タンザニアとコンゴ共和国を含んでいます。3つ目はエチオピア高地で、エチオピアの大部分と、エリトリアとスーダンのごく一部をカバーし、大地溝帯に二分されています。

これらのつの主な大山塊に加えて、周辺の山々がこのホットスポットに含まれており、ケニヤとタンザニア高地の新生代火山(キリマンジャロ山、メル山、ケニヤ山、エルゴン山、アバディア山脈、他)、南西サウジアラビアのアシール山脈、イエメンの高地と東部ジンバブエのチマニマニ高地などがそれにあたります。

これら大山塊の多くは元々は火山で、実際、アルバーティーン地溝は活動中です。この火山と地震活動は、およそ3500万年前にアフリカとアラビア地殻構造プレートが分離したために起きました。これにより、シリアからジンバブエとモザンビークを流れる東アフリカ大地溝帯が生まれました。このホットスポットの山々を織り成した地質学的な変動が、タンガニーカ湖(深さ1471mで世界で2番目)、アルバート湖、タナ湖とマラウイ湖(ニアサ湖)など、世界で最も注目される、数々の湖を作り出してきました。

東アフリカ山岳帯ホットスポットの植物相は、非常に類似し、連続性があり、標高が上がるにつれて、その構成が変わっていきます。標高の下限は通常、1500-2000mとされていますが、東アフリカ山岳地帯の植生の南端と考えられる、南アフリカのナイズナの森は(このホットスポットには含まず。)標高300mメートルに位置しています。

ジュニパレスは北東、東アフリカの乾燥林に見られますが、最も広範囲に植生している樹木はナギです。竹の植生地域は2000-3000mで、ハゲニア林がその後3600mまで、確認できます。ナギやジユニパレスのように山林に良くある木々は経済的価値があり、エチオピア高地からのコーヒー(アラビアカコーヒー)や穀物のテフ(エラゴスティステフ)を含めた数種類の作物が栽培されてきました。

ルウェンゾリ山地、アバデア、エルゴン山、キリマンジャロ山、ケニヤ山とバレとシミエン山地のような最も標高の高いところでは、アフリカ高山地帯の植生は、一般的に標高3,400メートル以上で確認できます。アフリカ高山の植生は巨大セネシオ(ジャイアントセネシオ)やジャイアントロベリア(宿根ロベリア)、ヘリクリサムの低木などに代表されます。

東アーク山脈では、植生のタイプに 高地・低山植生帯、高山帯、亜高山帯、低地林が含まれ、高地のアフリカ山岳草原地帯と常緑低木植物群落などがそれにあたります。草原地帯はアフリカ南部の地溝における主要な生息環境である一方、森林は、保護された渓谷や山の尾根に見られます。

アルバーティーン地溝の山々の主な植生タイプは、山地林ですが、標高の最も高いところでは、氷河と岩が広がり、その下に、ジャイアントセネシオ、ジャイアントロベリアやボグが生息する高山湿地があり、続いて、ジャイアントヒース、竹、山林、山の中腹林、そして低地林、森林、サバンナなどのゾーンが広がっています。

アルバーティーン地溝には、パピルスとカレックス湿地帯だけでなく、温泉の他、昔、流れた溶岩流の痕に根を這わせた、特異な硬葉植物の植生(コンゴ共和国の東のヴィルンガ国立公園内)などが見られます。

エチオピアの高地、丘陵地帯には、森林の生長を支える一方、少しでも高い地域の森林は針葉樹に覆われています。3,000メートル以上になると、アフリカ高地の生態系は草原地帯と湿地帯から成り、豊富なハーブ層が広がる一方、さらに標高が高い場所の常緑低木群落はヒースによって覆われています。

 

西アフリカ・ギニア森林

© Piotr Naskrecki

西アフリカの低地森林地帯はアフリカの哺乳類の4分の1以上が生息しており、20種類以上の霊長類が含まれています。しかしながら、伐採、採鉱、狩猟、人口増加が森林生態系を大きく圧迫しており、コビトカバ、ニシチンパンジーなどの絶滅危惧種の生息を脅かしています。また、固有鳥類の生息地も広く分布していますが、これらも危機に瀕しています。

概説

西アフリカ・ギニア森林は政治的には、西アフリカ(ギネアとシエラレオネから東方のカメルーンのサナガ川まで)の低地林を全て含んでいます。これは、リベリア、コートジボアール、ガーナ、トーゴ、ベニンとナイジェリアの国を含んでおり、各国は、森林の断片を維持しています。ホットスポットはまた、ギネア湾の4つの島、赤道ギニアを形成しているビオコ島とアンノボン島、独立国家を形成しているサントメ島とプリンチペ島です。ビオコ島は大陸棚島で、残りは全て大洋島です。

ホットスポットは、新生代第四紀前期の間、森林の収縮と細分化によって創り出された、森林にとって重要なレフュジーア(気候など、大きな変化が起こったことのない、隔離された地域)をいくつも取り込んだ、極めて異なる2つの小地域を含んでいます。

第一の小地域はギニアの上流地域で、ギニア南部からシエラレオネ東部を抜け、リベリア、コートジボアール、ガーナを抜け、トーゴ西部にまで延びでいます。二つ目の小地域は、ナイジェリアーカメルーン地域で、ナイジェリア西部からカメルーン南西部のサナガ川まで沿岸沿いに広がっています。2つの小地域は、ベナンのダオメーギャップ(農地、サバンナ、非常に劣化した乾燥林)で二分し、このホットスポットは、カメルーン高地(カメルーン山は、4,095メートルで、西アフリカの最高峰です)とニンバ高地など、いくつもの重要な山岳地域を守っています。

ギニアの森は、沿岸沿いの湿地林から、淡水の湿原(ニジェールデルタ周辺など)、内陸では、乾季が長引くための半落葉樹林まで、幅広い植生で成り立っています。西アフリカ諸国のうち、リベリアは湿地林全体に位置し、シエラレオネの相当部分も境界付近に接しています。

 

アフリカの角

© O. Langrand

乾地性気候のアフリカの角ホットスポットは、何千年もの間、生物的資源の宝庫として知られてきました。乾地性気候にある2つのホットスポットの1つであり、ベイラやディバダグ、スペックガゼルのような絶滅危惧種で固有のアンテロープ種やアフリカのどの地域よりも固有な爬虫類が生息しています。その他独特な固有種には、ソマリノロバやマントヒヒなどもいます。しかしながら残念なことに、世界で最も破壊が進んだホットスポットでもあり、原生の生態系地域のうちすでに95%が失われています。

破壊の最も大きな要因が過放牧であり、政府の管理が機能しないまま、木炭が収穫されることもまた大きな問題になっています。 

概説

アフリカの角は何千年もの間、生物資源の宝庫としてよく知られてきました。古代エジプト人、ギリシャ人、ローマ人はフランキンセンスやミルラ、その他、自然由来の日常消耗品を求めて使節やキャラバンを送り、アラビア砂漠を通過して、香料交易路に沿って、北部に戻ってきました。このホットスポットは、乾燥した“角”やエチオピア高地の東部を中心に、エチオピア高地を、北東ケニアの乾燥した低木林地帯とアラビア半島の南の沿岸地域に、大きく二分する、リフトバレーを含んでいますが、 政治的には、ソマリアの大半、ジブチ全体、エチオピア、エリトリア、ケニア、イエメン、オマーン、および極東スーダンのごく一部も含んでいます。 その他、北東ソマリアの沖合いのソコトラ諸島と、紅海の数百もの小さな島々も含まれています。

ホットスポット全体は150万km²以上もの面積ですが、比較的大きな土地の割には、植物相が非常に限られており(例:ダナキル窪地)、固有の植物の多くは、その地域のほんの限られた場所でしか生息していません。また、ここの優先種はアカシアーコンミフォラの低木林ですが、他にも、常緑の低木林と多肉植物の茂る潅木地帯、乾燥常緑の森林、半砂漠性の草原、低く発達した砂丘と岩のなどの幅広い植生が広がっています。その他、小規模のマングローブは、ホットスポットのアフリカ側とアラビア側の両地域だけでなく、ワベ シャベル(Wabe Shabelle) 川とアワシ(Awash)川のような大きな河川沿いにもその植生が確認できます。

“アフリカの角”は完全に乾燥したホットスポット2箇所のうちの1つです。(もう1箇所は西アフリカのカルー多肉植物地域)これら2つの乾燥した地域 は、更新世の時代の乾燥した低温な時期の間と、おそらく第三紀の初期に、“乾燥回廊”(arid corridor)によってつながったと考えられています。顕花植物種のいくつかは、例えば、キセニア(Kisseni)は、乾燥した“角”地域に1種、カルー多肉植物地域に1種、ウェルステディア(Wellstedia)は、 乾燥した“角”地域に6種、カルー多肉植物地域に1種、というように、完全にこれら2つの地域に限定して生息しています。

 

カルー多肉植物地域

Cracked earth in Richtersveld National Park 
© Tessa Mildenhall

南アフリカとナミビアに位置するカルー多肉植物ホットスポットは、地球上で、もっとも豊かな多肉植物相が見られ、植物、爬虫類、無脊椎動物のとびぬけた固有性を誇っています。乾地生気候にある2つのホットスポットの一つであり、人間の姿に似た多肉植物のハーフメンズやトカゲ、カメ、サソリなどの固有種が生息しています。

近年、放牧や農業、炭鉱(とくにダイヤモンドや重金属)などによって、この脆弱な土地が危機にさらされていますが、まだ幸いなことに、人口がそれほど多くないために、他の人口密集地域に比べると、カルー多肉植物地域の保全は、非常に機能しています。

概説

アフリカの大西洋岸に沿って、南アフリカの南西部から南ナミビアに伸びているカルー多肉植物地域のホットスポットは、10万2691㎢の砂漠を含んでいます。 このホットスポットのいくつかの場所は、南側に位置するケープ植物相地域内にも点在しています。実際、大ケープ植物相地域として、カルー多肉植物相地域を含んでしまうべきだと主張が出るほど、ケープ植物相地域と非常に強い関係性があります。

カルー多肉植物地域は、主に、冬季降雨型の砂漠から成っています。また、ホットスポットには、完全に乾燥した地域が2か所ありますが、その一つがこのカルー多肉植物地域です。(もう一か所は、アフリカの角)

この地域は一般的に、2つのエリアに分かれていますが、一つは、ナマカランドで、南アフリカとナミビア南部の西海岸に沿って広がっています。ここは、冬季降雨型砂漠で、気候は、冷たい大西洋海流によって温暖になっています。この温暖な気候のおかげで、多くの固有種が進化をとげてきました。

もう一つのエリアは南部カルー地域ですが、春と秋に雨が多く降り、ナマカランド砂漠より気候の変化は激しくなっています。また、多肉の葉に覆われた小型の灌木がホットスポット全体に、見ることができます。

このような干ばつに適した植物は水の貯蔵に適して、太く、肉厚な葉を持っています。カルー多肉植物地域では、およそ1700種もの多肉植物があり、これは、世界中の砂漠でもユニークな光景となっています。最も大型のグループにある、メセンブリアンテマ科は近年、非常に爆発的に多様化しており、顕花植物の中では、今までに類を見ない現象として表現されてきました。春には、灌木の空間に(特にナマカランド)、球根類や一年草が、素晴らしい花を咲かせ、茎多肉植物も約140種がここで見ることができます。また、南部カルー地域の丘の多い場所には、常緑の低木と背の高いアロエの木が点在しています。

 

 

 

 

 

マダガスカルおよびインド洋諸島

© CI/photo by Russel A. Mittermeier

マダガスカルとその周辺諸島には驚くべきことに、地球上他の地域には存在しない、8つの植物種、4つの鳥類、5つの霊長類が住んでいます。マダガスカルにいる50種以上のキツネザル科は、保全の象徴として広く世界に知られていますが、残念ながら人間が入植して以来、15種以上が絶滅の危機に追いやられてきました。

インド洋に位置するセイシェル、コモロ、並びにマスカリン諸島は、数種の絶滅危惧鳥類種が生息しています。また、セイシェルには、固有の両生類のセイシェルガエル、同じく固有の爬虫類のアルダブラゾウガメが生息しています。

概説

アフリカの南東沿岸沖の西インド洋に点在する島々が、マダガスカルとインド洋諸島のホットスポットを形成しています。その大部分は地球上で4番目に大きな島であるマダガスカル共和国が占め、独立国家であるセイシェル(アルダブラを含む)、コモロ、モーリシャス(ロドリゲスを含む)、フランスの海外県であるレユニオンとマヨット(コモロ諸島の一つ)、マダガスカル周辺の無人島群もホットスポットに含まれます。

マダガスカルとセイシェル諸島は超大陸であったゴンドワナ大陸から1億6千万年前に分離したため、その地のホットスポットは隔離された中で種が進化しているという実例が見られます。アフリカに隣接しているにもかかわらず、その島々にはアフリカ周辺で見られる典型的な動物群が全く生息していません。反面、アフリカ大陸のたった1.9パーセントの地域で、遺伝子や科の固有性水準が高いまま、非常に独自の進化を遂げてきました。

このホットスポットの植生は実に多様です。マダガスカルでは、島の東側の断崖沿いと、低地帯にある熱帯雨林は、西側沿岸沿いの乾燥落葉樹林に取って代わられています。最南端は、珍しい半砂漠有刺林(スパイニーデザート)で覆われています。また、島にはコケや地衣類が生える森林が生い茂る、ツァラタナナ山地やアンドリンギトラ山地を抱えています。固有種の多くが生息する西部の乾燥林と東部の熱帯雨林の北部の移行地帯であるサンビラーノ一帯には独自の固有種が沢山生息しています。

インド洋諸島は、比較的新しい様々な火山諸島(マスカリン諸島及びコモロ諸島)や、大陸物質の断片(セイシェルの主要島群)、アミラント諸島のサンゴ礁及びファーカー環礁群、コズモレド諸島やアルダブラ諸島群、5つの無人島群などによって形成されています。

火山島は標高が高く、最近まで深い森で覆われていました。実際、コモロ諸島とマスカリン諸島は時々、激しい雨量を記録します。(レユニオンでは、最大年間雨量は6,000ミリにも達します)。インド洋の最高峰は、レユニオンのピトン・デ・ネージュ(Piton des Neiges: 標高3,069メートル)で、観測史上最も激しい豪雨を記録したことがあります。1980年には、一週間で4.9メートルの雨が降りました)。それとは対照的に、セイシェル諸島では比較的、乾燥し。標高が低く、最も高いところでも、モーンセイシェル国立公園(Mourne Seychellois National Park)で914メートルしかありません。

 

マピュタランド・ポンドランド・オーバニー(アフリカ南東部沿岸)

© Scotch Macaskill

マピュタランド・ポンドランド・オーバーニー(アフリカ南東部沿岸)はアフリカ南東部沿岸に位置する『大断層』に沿っており、固有植物種の重要な生息地です。暖温帯に属する原生林には、600種近くの樹木種が生息しており、最も、樹木種が豊富な温帯林です。よく知られたストレリチアは代表的なホットスポットの固有種です。

ここでは、ミナミシロサイの亜種を絶滅の縁から救出することに成功しており、アフリカの自然保護活動の中でも最も有名な成功例の一つとして知られています。にもかかわらず、多くの大型哺乳類の生息地である草原と森林は、いったんは広がりを見せたものの、工業化と地元の農業、放牧地の拡大のため、新たな脅威が押し寄せてきています。

概説

マピュタランド・ポンドランド・オーバーニー(アフリカ南東部沿岸)はアフリカ南東部沿岸に位置する『大断層』に沿っており、モザンビークの最南(リンポポ川の南で、東アフリカ沿岸林地域)と、北は南アフリカのムプラマンガ州(オリファント川の南)から、スワジランド東部を通って南部の南アフリカ共和国の東ケープ州へと続いています。

この地域は植物相的にも、気候学的にも、また地理的にも複雑です。そして、固有種の多さや生物多様性が高さという点で、少なくとも3つに分けることができますが、それは、このホットスポットの名前にもなっていますが、北のマピュタランド(Tongaland)、さらに南のポンドランド、そして南西のオーバーニーになります。

この地域の地形は北には古代から続く砂丘と低地、中央部と南部には、谷間を流れる川に深く削られた起伏の激しい段々畑まで様々です。

また、ホットスポットは、スネーウ山脈、ウィンターバーグ山脈、アマトラ山脈、Ngeli 山脈、レボンボ山脈、およびNgoye 山脈などいくつもの山脈を擁し、ホットスポット西側には、南部アフリカの内陸高所地域にある高原と沿岸低地とに二分する『大断層』に隣接しています。

ホットスポットの植生は主に森林、雑木林、低木地帯、および草原から成っており、 南アフリカに現存する森林の約80パーセントはこのホットスポットに含まれています。これら暖帯林は、およそ600種の樹林の生息地であり、世界のどの地域の温帯林よりも、多様性が高くなっています。 加えて、多肉植物も非常に豊富ですが、南アフリカ西部のカルー多肉植物地域に占めている葉多肉植物とは対照的に、オーバーニー地域では、茎多肉植物が主流となっています。また、森林1種(Licuáti林)、雑木林3種、低木地帯6種そして、草原5種が、この地域に限定して生息しています。