「IUCNレッドリスト2006」発表 -1万6119種の動植物が絶滅の危機
 
 
シロクマや、カバ、サメも絶滅危惧種に
(5月4日 東京)- 今回の「IUCNレッドリスト2006」で、絶滅危惧種は1万6119種になった。 わたしたちになじみのある「ホッキョクグマ(シロクマ)」や「カバ」、また、砂漠地帯に住む「ガゼル(レイヨウ)」、「サメ」、その他、淡水魚や地中海の植物などが加わった。一方、ヨーロッパでの保護活動の成果により、世界のオジロワシの個体数は倍になり、危機の度合いが下がった。

公式に「絶滅」とされたのは、784種で、さらに65種が野生絶滅種として記載されている。国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストの基準で評価された40,177種のうち、現在16,119種が絶滅のおそれがあるとされている。両生類の3分の1、針葉樹の4分の1、鳥類の8分の1、ほ乳類の4分の1が危機的な状況にある。

「IUCNレッドリスト2006」は、地球上の生物多様性の喪失が進行していること、さらに人類の活動が生物種に負荷を与えていることを明らかに示している。IUCNレッドリストは、世界的な動植物の状況を評価したものとして広く知られており、2010年までに、現在の急激な生物多様性の喪失傾向を大きく減少させるという世界的な目標達成が、どの程度進んだのか、またどの程度失われたのかを正確に測定する基準となっている。

「IUCNレッドリスト2006は、生物多様性の喪失が進み、そのペースが衰えていない、ということを明らかに示している。」とIUCN事務総長のアキム・シュタイナーは述べている。さらに、「生態系の生産性と回復力、それらに依存している数十億の人類の生活や生命に対して、この傾向の意味するものは深刻だ。多くの保全活動が証明してきたように、この傾向を食い止めることは可能である。世界的な規模で成功するためには、社会のすべてのセクターにまたがる新しい協力体制が必要だ。生物多様性は、環境活動家だけでは守ることはできない。力と資金をもつすべての人が行動する責任がある。」と語った。

「地球温暖化が、生息域の破壊や外来種の危機と同じようにすっかり普通の脅威の原因となってしまった現在、われわれは、ますます多くの種を失っている。」と、IUCN種の保存委員会霊長類専門家委員会議長兼CI会長のラッセルミッターマイヤーは言う。さらに、「この絶滅の危機は、中南米で最も顕著である。気候変動と新種の病気により130種もの両生類がいなくなってしまった。」と述べた。

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温暖化の影響でシロクマが絶滅危惧種に
ホッキョクグマ(シロクマ, Ursus maritimus)は温暖化の被害者になるだろう。極地での気候変動の影響が進んでおり、夏期の海氷面積は今後50年から100年の間に、50パーセントから100パーセント減少すると予測されている。ホッキョクグマは、海氷の上で餌となるアザラシを捕獲し北極の海洋環境に特化した生態を持つため、45年以内に個体数が30パーセント以上減少すると予測されている。これまでのIUCNレッドリストでは保護依存種(LR/cd)とされていたが、さらに絶滅のおそれの高い「絶滅危惧Ⅱ類(VU)」にランクされた。

砂漠ではガゼルが急激に減少
人類の地球への"フットプリント(重圧)"は、人間の影響から最も遠いと思われてきた地域にも広がっている。砂漠および乾燥地帯は、比較的影響を受けていないと思われていたが、この地域に順応した動植物も、また希少であり最も脅威にさらされている。ゆっくりと、だが確実に、砂漠地域は多様で特徴的な野生生物を失いつつある。

砂漠の野生生物に対する脅威は、無秩序な捕獲と生息地の劣化だ。サハラ砂漠のダマガゼル(Gazella dama)は、レッドリスト2004で既に絶滅危惧ⅠB類(EN)にあげられていたが、狩猟活動を抑制できなかったため、過去10年間にわたり80パーセントもの個体数減少が続き、絶滅危惧ⅠA類(CR)と危険度が増した。サハラ地域の他のガゼルも絶滅の恐れのある状態になっており、野生絶滅となってしまったシロオリックス(Oryx dammah)と同様の運命にあるとも見られている。

アジア地域のレイヨウ類も同様の危機に直面している。コウジョウセンガゼル(Gazella subgutturosa)は、中央アジアから中東の砂漠地帯・半砂漠地帯に広く分布し、数年前まではカザフスタンやモンゴルにかなりの数が生息していたが、この両国でも、生息地の破壊と食用目的の違法狩猟によって急激に減少してしまった。コウジョウセンガゼルは、準絶滅危惧から「絶滅危惧Ⅱ類(VU)」に再分類された。

初めて海洋生物評価を実施 -サメやエイが危機に
はじめていくつかの海洋生物群の包括的地域評価を行ったことも、レッドリスト2006の大きな特徴だ。

サメとエイは、体系的評価が行われた最初の海洋生物群だ。547種のうち、20パーセントが絶滅の危機にある。成長の遅いこれらの種は、とりわけ過剰捕獲の影響を受けやすく、世界中で前例のない速さで減少していることが明らかになった。
ヨーロッパの魚市場で普通に見られたエンジェルシャーク(ホンカスザメ)(Squatina squatina)やガンギエイの一種Common skate(Dipturus batis)の状況は、近年の多くのサメ・エイの状況の悪化を代表するものである。ホンカスザメは北海ではすでに絶滅が宣言され、Common skateはアイリッシュ海および北海南部にわずかに残るだけとなった。

「海洋生物種も陸の生物と同様に絶滅の危機にあることがわかってきている。サメやエイのこの状況は氷山の一角に過ぎない」とIUCNレッドリスト担当のクレイグ・ヒルトンテイラーは訴える。「漁業禁止区域の設定や網目サイズ制限の徹底、国際的捕獲総量制限など、資源管理方法の改善や具体的な保全活動を緊急に行うことが重要だ。手遅れになる前に。」

淡水の生物 -マータイ氏にちなんで名づけられたトンボ
地中海地域に固有の252種の淡水魚のうち、56パーセントがもっとも劇的な減少に直面しており、7種が絶滅種とされた。また、今まで評価された564種のトンボ・カワトンボのうち、スリランカに固有の40パーセントのトンボを含むほぼ3分の1が絶滅危惧種となった。水中でも水の外でも生息するトンボは環境の指標として知られ、ケニアでは、ケニア高山地域に生息するトンボ(Notogomphus maathaiae)をノーベル平和賞受賞者ワンガリ・マ-タイ氏にちなんで名づけ、「流域の守護者」として環境保護活動の象徴となることを期待している。

カバが危機に
よく知られている大型の水棲動物・カバも危機的な状況にある。1994年にはアフリカで第二の生息地だったコンゴ民主共和国での95パーセントという壊滅的な減少を受け、「絶滅危惧Ⅱ類(VU)」にランクされた。

西アフリカの一部の国にのみ生息するコビトカバ(Hexaprotodon liberiensis)も政治不安の影響を受けている。すでに「絶滅危惧Ⅱ類(VU)」として掲載されていたが、違法伐採や法政執行ができないために生息地の森林が分断され、「絶滅危惧ⅠB類(EN)」となった。

地中海の植物
34ヶ所の生物多様性ホットスポットの1つである地中海地域は25,000種の植物種を有し、そのうちの60パーセントはここでしか見られない種であるが、都市化、大規模観光、集約農業などにより危機に直面している。

自然環境保全の取り組みの成果
自然環境保全活動により、いくつかの種の状況が改善している。

オジロワシ(Haliaeetus albicilla)の個体数が1990年から2倍に増え、「準絶滅危惧(NT)」から「低懸念(LC)」に危険度が下がった。ヨーロッパにおける法制度の強化や生息地保護への取り組みが効果をあげた。世界的に見て危機の度合いが下がったが、アジア地域の個体群については、改善傾向になく、依然として注意が必要である。

オーストラリアのクリスマス諸島に生息するモモグロカツオドリ(Papasula abbotti)の危険度が「絶滅危惧ⅠA類(CR)」から「絶滅危惧ⅠB類(EN)」に下がった。

自然環境保全の取り組みにより、近い将来の成果が期待される種
世界で最大の淡水魚である東南アジアのメコンオオナマズ(Pangasianodon gigas):「メコン湿地生物多様性および持続可能な利用プログラム」の象徴種としてとりあげられている。

インドハゲワシ(Gyps indicus) :インドでは有害な家畜用の薬品が禁止され、飼育繁殖が計画されている。

その他、メガネモチノウオ(Cheilinus undulates)、サイガ(Saiga tatarica)なども自然保護キャンペーンの対象となっている。