脅かされる言語:生物多様性ホットスポットと原生自然地域における、生物多様性と言語多様性の密接な関係
 
世界で使われている言語の約70%は、生物多様性ホットスポットと原生自然地域に由来しているという事実が発見された。研究者たちは、生物多様性を保全することが、言語と文化的多様性を保存することにもつながるという

125749-S.jpg2012年6月11日(米国、アーリントン)
先月発行された米国科学アカデミーの報告書によると、豊かな生物多様性を誇る地域は、同様に言語的・文化的多様性も持っていることがわかりました。この研究では、世界で知られている言語の約70%(4,824)は、地球の陸域面積全体の1/4以下の地域に由来していることを示しています。
 
世界の4,000種類以上の言語は1万人以下しか話し手がおらず、それらの言語のうち2,804種類は、開発と人口増加によって危機にさらされている”生物多様性ホットスポット”(原生の生態系の70%以上が失われた地域)と”原生自然地域”(多数の固有種が生息しており、比較的人間の影響を受けていない地域)で見つかりました。さらに、それらの言語の1,219種類は話し手が1,000人にも満たないため、今後言語が消滅してしまうことが懸念されています。

この度の研究では、ペン・ステート大学、オックスフォード大学、そしてコンサーベーション・インターナショナルの専門家で編成された研究者たちは、現在35箇所ある”生物多様性ホットスポット”と5箇所の高い生物多様性をもつ”原生自然地域”に焦点を当てました。
 
「言語、文化的多様性と、豊かな生物多様性をもつ地域の関係性を示すことは、環境保全は人間性を伴うことの重要性を理解する上でも大事な一歩です。」と、ペン・ステート大学の助教授であり、研究の主筆でもあるラリー・ゴレンフロは語ります。
「俯瞰的に、それらがどれほど密接に関係しているかを調査すれば、生物多様性を守るための戦略が、同時に言語多様性を守ることにつながることが理解できます。ホットスポットにおける脅威のレベルを考えると、生物多様性と言語多様性の両方を守るための協力は、不可欠かつ早急に実施されなければいけない、と我々は考えています。」
 
豊かな言語多様性を持つホットスポットには、「東メラネシア諸島」、「西アフリカ・ギニア森林」、「インドビルマ」、「中央アメリカ」と「ウォーレシア」が挙げられ、それぞれの地域は250種類以上の言語の発祥地とされています。さらに、ニューギニアの原生自然地域は976種類という最も豊かな言語多様性を誇っていますが、そのうち4種類以外は全てがそれぞれの地域に固有のものです。

「ホットスポットというのは物事が起こる場所なのです。」とコンサーベーション・インターナショナルの会長であり、論文の共同著者でもあるラッセル・ミッターマイヤーは言います。「世界の陸上生物のうち、絶滅危惧IA類とIB類に指定される80~90%は、ホットスポットに生息しています。そして1950年以来世界で起きている紛争の80%以上は、ホットスポットで起こっています。物事の源泉となっている場所と人類にとって大切な作物種の多様性をもつ場所は重なっています。そしてそれらは特に貧しい人々にとって生きるのに必要不可欠な恵みを与える生態系サービスを提供してくれる場所でもあります。また、多くの言語や文化が、同様にホットスポットに残っているということもわかっています。これらの生物多様性が豊かな地域では、言語や文化の保護も優先すべきです。それらの言語の大部分はその地域に固有であり、1000人以下の話し手しかいないのです。」
 
 
論文の共同著者であり、オックスフォード大学の言語学者であるスザンナ・ロマインによって行われた研究では、主要な言語の約50~90%は今世紀末までに消滅してしまうだろうと予測されました。ホットスポットにおいて、1,553種類の言語は1万人以下の話し手しかおらず、それらの言語のうち544種類は1,000人以下しか話し手が存在しません。また、原生自然地域では、1,251種類の言語は1万人以下の話し手しかおらず、657種類の言語は1,000人以下しか話し手がいません。
 
 
「この論文は人間と自然の関係を強めるものです。」と、論文の共同著者でありCIの社会政策と実践部門のバイスプレジデント、クリステン・ウォーカー・ペインミラは言います。「小さな民族の言語は生息地の破壊によって失われやすい。そして、言語が消失することは、世界規模で生態系が崩れている表れのひとつなのです。」とロマインは言います。

言語と文化の多様性、生物多様性の関係は非常に密接です。総合的で皆が参加するアプローチによって、人と自然の関わり方の多様性を将来世代に残していくことがとても大切です。

 


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本件に関するお問い合わせ
コンサベーション・インターナショナル・ジャパン 磯部麻子
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コンサベーション・インターナショナル(CI
科学、パートナーシップ、そして世界各地での実践活動に基づき、持続可能な社会の実現を実現し、人類の生活の質の向上を目指す、国際環境NGO。生物多様性ホットスポットを中心に、世界40 カ国以上で約1000名のスタッフが保全活動を展開。1997年旭硝子財団ブループラネット賞受賞。理事に俳優ハリソンフォード、インテル設立者ゴードン・ムーア、作家ジャレド・ダイアモンドなど。2012年、CIは創立25周年を迎えました。