科学者たちによる西ニューギニアの秘境での大発見
 
 
【調査でわかったこと】 今回の発見の最大の意義は、フォジャ山脈が地球規模の生物多様性の財産を持つことと、本当に最後の人類未踏の熱帯の地であることが明らかになったことです。30万ヘクタール以上もの人跡未踏の貴重な地域を含む100万ヘクタール以上の区域は、アジア太平洋地域で最大の重要な原生森林で、多数の新種の発見は、ここが「ロストワールド」であることを示す証拠。今後、厳重な保全と詳細な調査が必至です。

新種のミツスイを発見

幻のゴクラクチョウの生息地域が判明

ホーリーゲール(聖杯)といわれるニワシドリの写真撮影に初めて成功

キノボリカンガルー6種やミツユビハリモグラなど40種の哺乳類を記録

20種以上の新種のカエルを発見

5種のヤシなど植物の新種を発見

記録的な大きさのローデンドロンの花を発見

4種の新種の蝶を発見

調査地域と現地の住民

アジア太平洋地域で最大の太古からの湿潤熱帯林 新種のミツスイ

ヘリから泥沼に降り立ったCIの調査チームの目の前に、フィードガイドのどの種とも似つかない風変わりな赤い顔の肉垂のあるミツスイが現れました。すぐに新種だと判明しました。ニューギニアでは、アメリカのオースティン・ランドがパプア第二の高峰のウィルヘルミナ山でスノーマウンテン・ロビンを1939年に発見して以来、66年ぶりの新種となります。 幻のゴクラクチョウの生息地が明らかに

ミツスイの新種発見の翌日、つがいのゴクラクチョウBerlepsch's Six-Wired Bird of Paradise(カンザシフウチョウの一種)がフィールドキャンプに現れ、オスが5分以上のディスプレイ(求愛ダンス)を披露。その一部終始を目の前で観察することができた調査隊は、大感激しました。

欧米の科学者が生きているこのゴクラクチョウを観察できたのは初めてです。1897年にドイツの鳥類学者Otto Kleinschmidt により、どこか不明の地からの1体の標本を元に発表されて以来、1世紀ものあいだこのゴクラクチョウの生息地は謎とされてきました。この種が、いままでの書物で取り扱われていたような亜種ではなく、完全で明確な「種」であることが明らかになりました。
ホーリーゲール(聖杯)といわれるニワシドリの一種の写真撮影に成功

鳥類学上の"聖杯(至福の奇跡をもたらす宝物)"といわれる伝説的なニワシドリです。ゴクラクチョウと同様、この鳥の生息地はこれまで謎とされてきました。調査隊は、世界ではじめてニワシドリとその”庭”の写真撮影に成功しました。このニワシドリはフォジャ山脈では一般的で、あずまやの中からメイポールダンス(自分で作った高い柱の周りでのダンス)をし、繰り返し呼び声をあげるので、簡単にいる場所をみつけられることもわかりました。

1895年にウォルター・ロスチャイルド卿により西ニューギニアのどこかから現地採集者により収集された交易品として、このニワシドリの標本が記録されています。存在が世界に知られたその後の82年間、少なくとも10回を超える博物学的調査が行われましたが、生息地は判明しませんでした。

1981年、カルフォルニア大学のディアモンド教授は、フォジャ山脈奥地のモンベラモ盆地での短期観察調査でこの鳥の生息地を発見し、科学者たちを驚愕させました。生息地調査では幾種もの多様な新種がみつかるのではないかと考えられていましたが、今回の調査でその推測が正しかったことが判明しました。
キノボリカンガルー6種やミツユビハリモグラなど40種の哺乳類

警戒心のない大型の動物も多く観察されました。食用動物で、ニューギニアのほかの場所ではあまり見られないキノボリカンガルーやハリモグラには何度も遭遇し、6種のキノボリカンガルーを含む40種類の哺乳類を記録しました。

ニューギニアでもっとも不思議な動物といわれるミツユビハリモグラは、簡単に捕まえられ、調査キャンプまで運ばれました。単孔類という原始的な抱卵タイプの哺乳類のなかで最大ですが、詳しいことはほとんど知られていません。また、いままでに捕獲されたものが卵を生んだことはなく、科学者たちは一度も卵を見たことがありません。
絶滅の恐れのあるキノボリカンガルー・Golden-mantled Tree Kangarooをインドネシアで初めて発見

絶滅の恐れのあるキノボリカンガルー・Golden-mantled Tree Kangarooの一群も発見されました。この種は、ジャングルの樹上で生活するカンガルーのうち、最も美しく希少です。インドネシア側での発見は初めてで、世界中でも他に1地域でしか見つかっていません。1993年にこの種について発表したティム・フランニー博士によると、パプアニューギニア側では、この種の95%以上が住民の自家用の狩猟により姿を消しています。おそらくこの種の存続は、フォジャ山脈で発見された群れにかかっているといえるでしょう。 20種以上の新種のカエルを発見

フォジャ山脈は、アジア太平洋地域でも有数のカエル生息地であることがわかりました。今回の調査及び昨年の短期間の調査で、60種以上の種を記録。少なくとも、20種が新種です。希少種でほとんど知られていないlaced-eye frog を多数発見し、さらにパプアニューギニアの2ヶ所の狭い地域でしか見つかっていなかったXenofhina arboricolaの一群も見つかりました。 5種のヤシなど植物の新種を発見

植物学者のチームは、550種以上の植物を採取。そのうち少なくとも5種がいままで知られていない木質植物で、3種がSphagnum沼地でのみ記録されました。林冠上部を埋めているのは、ゴンドワナ大陸の遺物とされる種類です。低山帯の群落でも、かなり高地に生息する分類のものが不規則に混ざって見つかりました。 記録的な大きさのローデンドロンの花を発見

樹上にまで高く伸びた着生植物のローデンドロンが何度も見つかりました。大きな白い香気のある花が咲き、開花から数日で地上に落ちます。植物学者が花のサイズを測ったところ、最大のものは、表面の直径が約15センチ。記録されている最大のローデンドロンの大きさに匹敵します。まだ種は特定されていませんが、ローデンドロン・コノリの単発的なグループではないかと推測されています。 4種の新種の蝶を発見

昆虫学者のチームは、150種以上の蝶を記録し、4種の新種といくつかの亜種を確認しました。そのうちの1種には、インドネシア大統領夫人の名前が付けられる予定です。 調査地域と現地の住民

霧のなか、インドネシア科学院の生物研究センターとCIの科学者あわせて11名および地元地権者からなる調査隊は、インドネシアの最東部パプア州・フォジャ山脈奥地にヘリコプターから降り立ちました。ニューギニア島の西半分になるこの地域は、いままでほとんど調査されていない場所です。約1ヶ月に渡り、フォジャ山脈の低地から2000メートル以上の頂上近くまで野性動物と植物を一つ一つ記録し、生物多様性短期集中調査(RAP)を実施しました。

慣習的地権者のクウェルバ族とパパスナ族は、この素晴らしい原始の森・フォジャ山脈の裾野で、野生動物を狩り、ハーブや薬草を採取しています。カンムリバト、ワラビー、ヒクイドリ、キノボリカンガルー、野性のイノシシなどが、村から徒歩1時間の範囲に豊富に生息しています。村の人口は数百人と少ないうえ獲物が豊富なので、ハンターが山脈の立入り禁止区域に踏み入っていく脅威はありません。
アジア太平洋地域で最大の太古からの湿潤熱帯林

今回の最も重要な発見は、フォジャ山脈に30万ヘクタール以上もの、ほとんど手付かずで、おそらくは一度も人が足を踏み入れたことがない貴重な地域があることが明らかになったことです。また、周囲の75万ヘクタールにもほとんど人が訪れた形跡がなく、道もなく、古代からの原生の熱帯雨林に覆われています。全体で100万ヘクタール以上の区域はアジア太平洋地域で最大の重要な原生森林を構成し、重要な生物多様性資源を貯え、パプア北部での重要な集水域でもあります。ここには、13種のゴクラクチョウをふくむ225種以上の鳥類が生息しています。インドネシアで最高の自然生態系を保全するため、自然保護団体および政府機関は充分な配慮を払わなければなりません。